hiroxxxの激ヤバブログ

80'sオタクが日々のどうでもいい事に鋭くメスを入れるブログ

hiroxxxの怪談「どしゃっ」

夏も近いし怪談でも書こうかな。

これは怪談ナイトでも話したことあるんで知ってる人は知ってるかも。つまり…それは

 

知らない人は知らないって事です!

(ぎゃあああああーーーっ!!)

 

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学生の頃にアルバイトをしていたお持ち帰り弁当の専門店に以前顔を出した時に聞いた話です。

僕がそこで働いていたのは十数年前なので、今では当然若い学生のアルバイトさん達がいて、僕のことを知るのはオーナーさんくらいです。
オーナーさんとは親しくさせてもらってたので近況報告にでもと立ち寄ったのですが、そこでこんな話を聞かされました。

ここでのアルバイト時代、色々と任されていた僕は、お店を22時で閉めた後に、その日の売上げを道路を挟んだ正面に建つオーナーさんが住むマンションに持っていくのが日課でした。

そのマンションは築十数年は経ってる感じの古いマンションで、お昼に見ると元々は白い色のマンションなんだなというのがわかるのですが、至る所が古くなっており、僕が売上を持っていく頃には、辺りに照明が少ないせいもあってか、黒ずんだ建物にしか見えませんでした。

マンションのロビーに入ると、これがまた見るからに古い感じの、寂れたエレベーターがありまして、アルミ製のドアが何かに擦れながら開くのが定番でした。

それから四階まで上がり、一番角部屋のオーナーの部屋の新聞入れに、袋に入れた売上げをどしゃっと落として帰る、とまあ流れはこんな感じです。

売上を持っていく頃は23時半をまわる事もあるので、直接オーナーに渡すのではなく、新聞入れに入れる、という今考えるとずさんだなぁと思えるやり方なのですが、オーナーに当時の話をしてると、「今でもこのやり方だよ」と言うではありませんか。

僕は「変わってないんだなぁ」と思いつつも、当時の懐かしい記憶を辿っていると、オーナーが「そういえばさ、昔マンションで見た女の人覚えてる?」と言うんです。
そんな事言ったかな?と余り思い出せずにいると、オーナーが学生の男の子を連れてきました。
「この間の話をしてよ!」と男の子に言うと、オドオドしながらも男の子が話し始めたのです。

現在、この彼が昔僕がやっていた手順と同じ流れで、売上をマンションに持っていってるそうなのですが、先日バイトが終わりマンションに行くと、普段は点いてるロビーの明かりが点いてない。
灯りを点けるスイッチもどこにあるか知らないので、エレベーターの階数を示す灯りだけを頼りにボタンを押したそうです。
しばらくするとエレベーターが降りてきたそうなのですが、これがまた灯りが点いてない。
エレベーターの中、真っ暗です。ドアが開くと同時にズズズーっと何かが擦れる音がしたのでびっくりしたが、よく考えたら毎回鳴ってる音だという事に気づいたそうです。

さすがに真っ暗なエレベーターには乗りたくないと思い、ふと階段のほうだけ薄っすらと灯りがあることに気づき、この日はじめて階段を使ったそうです。

階段も決して明るいとはいえず、とっとと済ませようと登り始めた時に、自分の前を誰かが上がっていくのが見えたそうです。

赤いスカートらしきものが階段の角をサッと過ぎたそうです。
彼は女性が自分の前を上がってると思い、怖がらせてはいけないなと気遣い上がる速度を少し遅くしたそうです。
で、ゆっくりと二階まで上がる、ふと前を見るとまたサッと赤いスカートが角に消えていく。
「あれ?この人も上がるの遅いなー」と思いましたが、気にもせず、三階に着く。
そして四階に向かって上がろうと上を向くと、今度は女性の半身が見えたそうです。
全身赤い色の服でロングスカート、ロングヘアーの女性の姿です。
でも顔は見えません。
なんだやっぱり女性だと思い、あと一階で着くなと上がろうとした時に「あれ?」
と何かが変だなと気づいた。

足音がまったくしない。

これだけ近い距離、しかも音が響く階段。
先に女性が上がっているなら足音がしないのはおかしいと思ったそうです。

なんだか不安な気持ちになりましたが、オーナーの部屋へは後一階登れば着く。

上を覗き込みながらゆっくりと上がり、ついに四階にたどり着きました。
四階につくと、女性の姿は見当たらず、気にしすぎたのかなと?思ったそうですが、その階の照明も消えていて、辺り一面真っ暗です。
外のわずかな灯りを頼りに、角のオーナーの部屋まで手探りで歩きます。

部屋の前までつくと、売上袋をドアの新聞入れにいれました。

どしゃ。

そして振り返り、通路を戻ろうとした時に、彼の目線の先、エレベーターと階段があるであろう場所に何かが見えます。

足でした。しかも裸足です。
誰かの足元だけがわずかな灯りで照らされた様に見えました、
足がこちらに歩いてきます。灯りのあった場所から離れた足はスッと暗闇の中に消えました。

彼は後ずさりします、角部屋なので行き止まり、どこにも逃げ場はありません。

ふと、またわずかな灯りで裸足の足が歩いてくるのが見えます。
こちらにゆっくり近づいてきます。
その時赤いスカートが見えました。

「さっきの女だ...」

身の危険を感じた彼は怖くなって、前を見れなくなりました。
視線を通路外に逸らした時、何かが目の前を落下しました。
一瞬でしたが逆さまになって落ちていく女と目が合いました。

彼は、その後無我夢中でオーナーの部屋をノックしていたそうで、出てきたオーナーに外まで送り届けてもらったそうですが、「あれは幽霊だった」と興奮した口調で話していました。

そこで聞き入ってたオーナーが私に言います。
「思い出した?昔見たって言ってたの」

ああ、そういえば当時僕が売上袋を持っていったある夜。
エレベーターに乗りこむと、遅れて赤いジャケットにロングスカートの女の人が乗り込んできた事がありました。

しかしその女性は私がエレベーターに乗っているのに気づくと「あっ...」と言って降りたんです。
そして女性は階段のほうに歩いて行きました。

そしてオーナーの部屋まで来たときになって売上を持ってくる事を忘れた事に気づき、急いで取りに戻り、またマンションにやってきました。

そして、売上袋を入れようとした時にかすかに香水の匂いが後ろからしたんです。
どしゃと売上を入れた直前の事でした。


翌日の朝、あのマンションの開放されたままの屋上から女性の飛び降り自殺があったとオーナーから聞きました。


きっとあの人ですよね?